あなたには、こんな経験がありませんか?
皆にとっては何でもないことなのに、自分だけ、すごく不安になる、自分だけが他人の感情や行動に敏感に反応してしまう。
- 私の性格の問題?
- 私の価値観が人と違っておかしいの?
いいえ、そうではなく、「体の自律神経系が、どう反応するか?」という問題なのです。
一体、どういうことなの?
本記事では『ポリヴェーガル理論』という自律神経系の理論から、不安や怖れが出てくるメカニズムについて説明していきます。
自律神経系って何?
そもそも、自律神経系とは、何なのでしょうか?
自律神経系というのは、あなたの命を守るための神経プログラム。
そして、自律神経系は進化的に3つの系統に分かれているのです。
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え?「交感神経系」と「副交感神経系」の2つじゃなかった?
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と思われたかもしれませんね。
従来の科学では、そういわれてきました。
けれども、1994年に発表されたPorges(ポージェス)の「ポリヴェーガル理論」の中で、自律神経系には、進化的に3つの起源があることが明らかにされたんです。
下図のように「1つの交感神経系」と「2つの副交感神経系」、合計で3つの系があると言われています。
- この副交感神経系は、爬虫類も持っている神経系です。
- 交換神経系は、哺乳類に発達した神経系。
- 3つ目の社会神経系は、霊長類で発達し、特に、人が健康的で幸せな生活を送るのにとても重要な役割を果たしています。
動物たちも持っている神経プログラムが人間にも残っているなんて驚きですよね!
人間は、爬虫類から哺乳類へ、そして霊長類へと進化してきた結果なので、こういうことになっているんですよ☆
脊椎動物の進化
自律神経系は安心な人間関係を助ける
さて、これら3つの神経系は、危険に対して、それぞれ違う防御反応を引き起こします。
「不安」は、危険を回避するために感じる防御反応で、「安心できない」「嫌だ」と感じたとき、イライラして批判的になるか、不安や怖れの思考が出てくるか、投げやりになるかは、どの自律神経系統が活性化するかによって変わってきます。
嫌なことがあったとき、安心ストックに余裕があれば「社会神経系」が活性化して、自律神経系のバランスが崩れないように調整してくれます。
自律神経系 「社会神経系」が助けてくれるとき
人間関係でトラブルになったとき、私たちは、まず、信頼できる誰かに相談したり、トラブルになった相手に「問題がある」ことを伝えたりして、温和に解決したいと願いますよね。
これは「③社会神経系」のサポートがあるからです。
この自律神経系は、仲間と協力することで安心感を得ようとする神経系なのです。
自律神経系 「交感神経系」が助けてくれるとき
けれども、人に相談しても問題解決しない、味方を見つけられない、という状況に陥ると、だんだん不安や怖れが出てきます。
これは、「②交感神経系」があなたを守ろうとしている証拠。
人間関係のトラブルなら、嫌な相手と関わるのを避けることでトラブル回避をしようとしているかもしれません。
けれども、避けても問題解決しなかったり、そもそも逃げられない問題に直面していたりする場合は、「自分以外の何かが悪い」という被害者意識が強くなったり、自分や他人を責める感情に呑み込まれたりします。
これも、あなたの体が「あなたを守ろう」と必死に闘っている証拠なのです。
(野生動物では、敵に襲われたときに逃げるか、攻撃するか、という行動をとるために交感神経系が活性化します。)
自律神経系 「副交感神経系」が助けてくれるとき
何をやっても、問題が解決せず、安心できないとき、例えば、逃げられなパワハラ上司や、逃げられない抑圧的な親やパートナーが敵になっているときは、最終的には「感じないようにしてやり過ごす」しかなくなります。
こんなときは「①爬虫類由来の副交感神経系」が、あなたの感覚をシャットダウンすることで、あなたの安心感を守ろうとしているんです。
(不動、フリーズ状態を促す神経系。)
人間の自律神経系 3つの戦略
こんなふうにストレスが高まれば高まるほど、霊長類しか持っていない高等な社会神経系から、「③ ⇒ ② ⇒ ①」というように爬虫類由来の神経系へと切り替わり、なんとか安心感を守ろうとするんです。
では、そもそも自律神経系は、野生動物たちの間では、どんな風に作用しているのでしょうか?
野生動物では自律神経系がないと身を守れない
哺乳類
哺乳類には、「闘う・逃げる」などの積極的な行動によって自分の身を守る「交感神経系」と「不動、フリーズ」という戦略をとる「爬虫類由来の副交感神経系」と、が発達しています。
例えば、ライオンに狙われているシマウマの場合は、次のようにして、活性化する神経系が切り替わっていきます。
1. ライオンとの距離がある程度離れていれば、身に危険が迫っているとはいえ、逃げ延びられる可能性が高いため、このような状況では、まず「積極的に逃げる」という交感神経系のプログラムにスイッチが入ります。
2. ライオンとの距離が近くなって「逃げきれなさそう」となったら「闘う」、例えば、後ろ足でライオンを蹴り飛ばす、などのプログラムが作動します。こちらも交感神経系が活性化している状態です。
交感神経系が活性化している状態では、闘うにしても逃げるにしても神経の緊張と体のエネルギーが最大値まで上がるような反応が起こります。
この例に挙げたようなシマウマの状態は、実際に「このまま死ぬかもしれない」状況ですから、そのような体の反応が起こって当たり前なわけですね。
3. そして、それでもライオンに首元に飛びかかられて、もう「距離0」「捉えられた状態」となると、今度は仮死状態のような「凍り付き反応」を示します。
このときにスイッチが入るのが、「爬虫類由来の副交感神経系」です。
交感神経系が落ち着いた結果として体が脱力するのではなく、興奮状態の極限でムリに心拍を急降下させ、体の筋肉を脱力させて不動にさせる作用なので、体には高い緊張のエネルギーが封じ込められたまま「不動」になっています。
ところが、このような状態から、運よく命拾いする場合が野生の世界でも起こり得るんです。
Youtubeに、いい動画ありましたので、ご紹介します。
この動画では、豹(ひょう)に首根っこを咥えられて、「生き延びられる可能性がゼロ」という状態のインパラが「不動」に陥っています。
そして、そこへハイエナがやってきて、豹はインパラを咥えて移動しようとするのですが「インパラが大き過ぎて持っていけない」と判断するや、インパラを手放して逃げ去ってしまいます。
ハイエナは群れで行動する動物なので、群れで襲われたら、豹一匹では太刀打ちできないからです。
結果的にインパラは九死に一生を得ます。
例え、敵に捕まっても、不動でいれば、新たな天敵に気づかれないというメリットもありますし、新たな敵に「死んでるみたいから、他のフレッシュな獲物を探そう」と、興味を失わせることもできます。
自然界では、死肉は腐っている可能性があるので、危険な食べ物だからです。
こんなふうに、一旦、交感神経系が興奮し切ったあと、体内に高い緊張のエネルギーが封じ込められた状態で、強制的に「不動」の状態に陥ると、目覚めた後も、体内には膨大な緊張のエネルギーが残っている状態になります。
こんな風に、大きな恐怖や全力でダッシュできるようなエネルギーが体内に残されたままでは、平常な状態で、適切な判断や行動がとれなくなるので、野生動物たちは絶対絶命のピンチから起死回生すると、大きな呼吸の回復が起こり、次に体が震えて、高い緊張のエネルギーを一気に外に放出します。
何度も死の恐怖を感じても野生動物がトラウマを抱えずに健康に生きられるのは、この「緊張の解放プロセス」があるおかげなのです。
では、人間の場合はどうでしょうか?
不安と自律神経系の仕組み
実は、人間には、この「緊張の解放プロセス」が本能的に行われる仕組みがありません。
人生の中で身体の中に生まれた「緊張のエネルギー」は、意識的に外に吐き出さない限り、溜まったままなのです。
すると、どうなるでしょうか?
小さな危険に対しても反応して、体内に蓄積された「緊張のエネルギー」が外へ出て来ようとします。
逆に、「安心ストック」がたくさんあり、体内に蓄積された「緊張のエネルギー」が少ない場合は、多少の危険に対しては大らかに構えることができます。
皆にとっては何でもないことなのに、自分だけ、すごく不安になる、自分だけが他人の感情や行動に敏感に反応してしまう。
この現象は、今の現実が平和でも、これまでの過去に体験してきたことによって「緊張のエネルギー」が体内に多く蓄積されていることを示しているんですね。
体の中に閉じ込められた緊張状態を押し留めて蓄積し、この状態が長期化すると、体に抱えきれないほどの緊張がどんどん溜まっていくことになります。
すると、あるとき、突然限界を超えてしまいます。
限界を超えた体は、どんなに小さな切っ掛けにも反応して、体内に溜まったエネルギーを解放しようとし始める。
それが、不安障害やパニック障害という症状です。
「他の人は平気なのに、自分だけ不安」
「そんなに不安にならなくてもいいのに、あれこれ心配してしまう」
こんなときは、体が行おうとしている「緊張の解放」を、積極的に助けてあげることで不安を和らげていくことができます。
では、具体的には、どうすればいいのでしょうか?
Porges(ポージェス)の「ポリヴェーガル理論」について書かれた論文では、体の「緊張」と「脱力」を繰り返すニューロ・エクササイズによって、体に溜め込んだ緊張のエネルギーを解放していくことができる、と書かれてあります。
※ニューロ=神経
近年のトラウマケア・セラピーでは、会話によるカウンセリングだけでなく、ボディワークを用いた「緊張のエネルギー解放」という考え方が主流になってきています。
それでは「緊張のエネルギー解放」の具体的な実践方法についてお伝えします。
自律神経系を静めるボディワーク
冷温浴
例えば、お風呂で「冷水を浴び、そのあと温かい湯船に浸かってリラックス」これを複数回、繰り返す、というものがあります。
《冷温浴のやり方》
36~42℃のお湯を湯船に張る。
シャワーの水温を14~24℃にセット。
(※初めて「冷温浴」に挑戦する場合は、冷水を24℃くらいにし、温水との温度差をつけすぎず、無理のない範囲で行い、体が慣れてきたら徐々に温度差を広げていくといくようにしてくださいね。)
温水と冷水、好きなほうからスタートし、それぞれ交互に浴びます。(5回くらいできるといいですが、最初は、負担にならない回数から始めましょう。)
最初に足先にシャワーをかけ、ひざ下、太ももの付け根に少しずつ範囲を広げ、最後に左右の腕にかけていくと、苦手な方も取り組みやすいでしょう。
温かいお風呂では、湯船に肩までよくつかって体を温め、その際、目を閉じて体の緊張がゆるんでいく感覚を感じながら、呼吸を意識します。
また、気持ちが安らぐ場所をイメージすると、さらに効果的です。
毎日できなくても、週に1回からでもでも大丈夫です。
※ただし、高血圧や内臓疾患がある人、心臓に不安がある人、薬やお酒をのんだ後などは、温冷浴を控えましょう。
この「冷温浴」は、自律神経系のバランスを整える以外にも血行促進や美肌効果なども期待でき、自然治癒力が高まるといわれています。
筋弛緩法
お風呂で冷水を浴びるのが苦手、という方は、「自分で筋肉に力を入れて呼吸を止め、息を吐きながら体を意識的に脱力させていく」を繰り返した後に、「気持ちが安らぐ場所をイメージする」という方法でも大丈夫です。
この方法を「筋弛緩法」と言います。
「筋弛緩法+呼吸法
- 体の緊張=「筋肉に力が入る」「呼吸が止まる」
- 緊張の解放=「筋肉のゆるみ」「息を吐く」
体の緊張を解放する「筋弛緩法 + 呼吸法」の実演動画を公開していますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
この「筋弛緩法 + 呼吸法」は、本当に少し「嫌なことがあった」というときでも、活用して頂きたい方法です。
また、寝る前に、仕事の小休憩に、仕事終わりにすることで、日常のストレスを「楽しみ」や「休息」の時間へ持ち込まない、ということができるようになります。
自律神経系のバランスを整える方法
冒頭で説明した次のような状況
「同じ出来事を体験しているのに、自分だけ、すごく不安が強い」
皆にとっては何でもないことなのに「自分だけ、他人の感情や行動に反応してしまう」
このカラクリの秘密は「体内に蓄積された緊張のエネルギー量」と「社会神経系」の活性化。
何故なら、『社会神経系』は、交感神経系や、爬虫類由来の副交感神経系の暴走を止めることができるからです。
例えば、大勢の人前で発表するときなど、「緊張する」と言っているのに、堂々と自分の最高のパフォーマンスを発揮できる人がいますよね。
こういったことは、「緊張していない」からできるわけではなく、「緊張してはいるけど、それを落ち着かせる神経系が同時に働いている」からなんです。
緊張のエネルギーを解放して「社会神経系」を活性化させるソフロロジー
緊張のエネルギーを開放させ、社会神経系を活性化していくことで、そもそも不安になることを減らすことができます。
もちろん、そのためには、毎日の呼吸ワークが欠かせません。
専門家に教えてもらいながら、一緒に「安心をつくる呼吸ワーク」の実践をする少人数レッスンを行っていますので、よろしければ、お問合せくださいね☆