「パニック障害」を克服していく道のりには、どんなステップがあるのでしょうか?

道のりが分かれば、克服していく自分をイメージしやすくなりますよね。

パニック障害の克服には「自律神経系の反応をどうコントロールしていくか?」ということがとても大切なんですね。

何故なら、パニック障害によって引き起こされる症状のほとんどが自律神経系の暴走によって引き起こされるからです。

一体、どういう仕組みになっているのでしょうか?

リケジョ・セラピストの筆者が、体の仕組みから導き出す「パニック障害克服の論理的ステップ」をご紹介します。

この記事でご紹介する呼吸療法「ソフロロジー」は、筆者が住んでいるフランスでは多くの医師がパニック障害・不安症の方へ推奨されているセラピーです。

筆者は、そのセラピー(ソフロロジー)のフランス労働省管轄RNCPレベル認定セラピストです。

体内の不安の伝わり方

パニック障害の大きな特徴として、目の前に危険がないのに「自分は死ぬかもしれない」と思うほどの強い不安や恐怖に襲われる、という点がありますよね。

では、「不安」とは、どのように発生し、脳へ伝わるのでしょうか?

不安な現実を認知するのは、目や耳や、鼻、皮膚の感覚などの感覚器官です。

具体的に「このシチュエーションは不安だ」と、頭で気づけるものもありますが、不安を誘発する原因が、すべて頭で特定できるわけではありません。

「なんか理由がよく分からないけど、呼吸が浅くなる、動悸がする、不安」などの症状が出る場合もあるんですよね。

体の感覚器官がキャッチする情報の多くは、無意識のうちに脳へ送られ、ほぼ反射的に体が反応するため「なんか理由は分からないけど・・・」ということが起こります。

※こうした無意識に感じる様々な感覚を、「ニューロセプション」と呼びます。

(ニューロ=神経、セプションは受け取るなどの意味が含まれる接尾語です。  例:「レセプション=受付」など。)

つまり、頭では気づいていない情報が、感覚神経を通して脳に沢山届けられている、ということです。

そして、その情報を元に、脳は体へ反応するように指令を送ります。

絵にすると下図ような感じです。

受容器(例:5感やバランス感覚・温度センサーなどのニューロセプション)が受け取った情報が、「感覚神経系」を通して脳へ伝わります。

そして脳は、臓器や筋肉などの器官に指令を出します。

つまり、軍隊に例えれば、「感覚神経」が体の外で何が起こっているかという情報を集める諜報部隊、そして、脳が軍司令官です。

ところで、上図では神経が1本の矢印で示してありますが、実際には、神経は電線のように一本で出来上がっているわけではありません。

いくつもの神経細胞が数珠つなぎになって、バトンリレーのようにしてシグナルが1つの神経細胞から次の神経細胞へと受け渡されていくんです。

下図は1つの神経細胞(ニューロン)の絵です。

ニューロン

このニョロニョロとした神経細胞の1つ1つがたくさん繋がって、諜報部員がキャッチした情報がバトンリレーされて脳まで運ばれていきます☆

シグナルのバトンリレーのされ方は「電気信号」と「化学物質(神経伝達物質)」の2種類があります。

1つの神経細胞内では、電気が走ることによって情報が伝わりますが、1つの神経細胞から次の神経細胞に情報をバトンタッチするときには、神経細胞の末端にあるシナプスから神経伝達物質というもの(バトン)が放出され、伝わります。

神経のバトンリレー

実は、諜報部員がキャッチした情報は、刺激の大きさが正確に伝えられるわけではなく、同じ刺激の大きさでも「超大変です!!」と大げさに伝えられたり、「大したことではありませんが、外界ではこんなことが起こっています」と控えめに伝えられたりすることがあるんです。

その仕組みは以下のような感じになっています。

仮に、平均的なシナプス間のバトンの受け渡しが3本で行わているとイメージしましょう。

同じシナプス間で、何回も繰り返しバトンリレーが行われると、一回、情報が来ただけで、「また同じような伝令が入るに違いないから、バトンの数を5本に水増しして、大変さを司令官にアピールしておこう」ということが起こります。

これを「シナプス増強」と呼びます。

具体的には、下図のようにバトンを受け取る側のシナプスの面積が広くなったり、バトンの受け取り手(受容体)の数が増えたりして、情報量が水増しされて伝わります。

パニック障害になると「体調の悪さや不安に結びつく刺激が、小さな刺激であっても、『大変さがアピールされて』伝わってしまう」とイメージすることができます

シナプス可塑性

一方で、受け取る情報の頻度が下がると、通常、3本のバトンの受け渡しだったのが、1本のバトンに減る、ということも起こります。「大したことないですけど・・・」と司令官には伝わる、ということですね。

これが「シナプス抑圧」です。

つまり、自分の身の周りの環境が同じでも、体が過敏に反応したり、冷静に反応したりするのは、この神経細胞のバトンリレーされる間に、「大げさに伝わるのか?」「控えめに伝わるのか?」という仕組みと関係があるんですね。

パニック障害を克服していくには、不安のシグナル伝達を鎮静化させ、代わりに安心のシグナル伝達を強化していくことが大切、ということになります。

お薬による克服

さて、日常生活の中には、不安を脳へ伝えるような、たくさんの刺激があります。

パニック障害の方は、小さな刺激でも、脳が大きな不安を感じるようなシナプス増強が起こっていると考えられます。

ですから、例え、シナプス間で受容体がたくさんの不安のバトンを受け取ろうとしても、バトンを受け取らせなければ、脳まで不安が伝わらないことになるんですね。

諜報部員が情報を掴んでも、軍司令官に送った情報が途中で何者かに奪われ、捨てられてしまったら、軍司令官まで情報が届かなくなりますよね。

パニック障害の方に処方される薬の作用は、不安を伝える神経シナプス伝達をブロックしたり、特別に安心の刺激がなくてもリラックスを伝える神経シナプスが「安心していい」という情報を伝えたりするようなものになっています

このようにして、不安に対して過剰な反応が癖になっている体の状態を静めていく作用があるんです。

お薬に関して「イヤだな」「離れられなくなるんじゃないのかな?」など、服用への不安があることも多いと思いますが、お薬を使うことで、不安を伝達する神経系に少しでも休んでもらうことができるようになります。

その間に、不安を引き起こす神経系のシナプス伝達が抑制されれば、お薬がなくなっても神経反応が落ち着くようになるわけですね。

もちろん、お薬を飲んでれば大丈夫、ということではなく、不安の大元がどういったことに起因しているのかを理解したり、不安を増大させる思い癖(認知パターン)を変化させていくことも大切です。

体調が良くてもお薬は飲まないといけないの?

上述のように、パニック障害を治していくには、不安の情報バトンを減らしていきたいですから、そのためには、不安を伝える神経系が使われる回数を減らすことは大切になってきます。

パニック発作が起きるほど大きな不安はないから「お薬は必要ない」というよりも、乗り越えられる小さな不安であっても、不安をできるだけ0に近づけておくことがパニック障害・克服への鍵となるんですね。

パニック障害 克服へのステップ1 発作への対処法

パニック障害を克服していくための最初のステップは、発作や体調不良の症状をなくすことではないんです。

「発作が起きないように」ということにばかりに捉われ、体調を監視しつづけるような状態がつづくと、逆に神経過敏になってしまいます。

ですから、パニック障害を克服していくための最初のステップは、「発作が起きたときに対処できる方法を持つこと」なんですね。

最初は、完全に発作をコントロールできなくっても、大丈夫。

でも、発作の最中に、辛い気持ちで、怖くて仕方がない気持ちで、発作が収まってくれるのを受動的に待つ状態から、何かしら自分の意志でする行動に意識をもっていけると、少し楽になります

パニック障害 克服へのステップ2 休職

お仕事をされている方は、お仕事を休職された方がパニック障害を克服しやすい、と言われています。

退職ではなく、休職がおススメなんですね。

日本では、病気が原因で休職することは法律で認められた権利でもあり、こうした理由で休職される方は様々なメリットが受けられるシステムになっています。

例えば、お給料の一部が支払われたり、病気から回復したときに戻れる職場が確保されたり、復帰する際も、短い勤務時間から段階的に復帰させてもらうなどの便宜を図ってもらえたり。

このような、補償のある状態で治療に専念できる状況は、将来への不安が減り、治療効果も上がりやすくなります。

真面目で責任感が強いと「仕事を休むなんて、考えられない」「周りに迷惑をかけるなんて、もってのほか」と思うこともあるかもしれませんが、その考え方を少しでも柔軟にすることで、克服の道のりが開けてきます。

「〇〇はダメ」「こうするべき」と、物事に「良し/悪し」をつける習慣は、ストレスになりやすく、自律神経系のバランスを崩す原因になります。

これまでは「信じられない」「許されない」と否定していたことを受け入れ、思考を柔軟にしていくことも、パニック障害の克服には大切なことです。

ストレスの多い現代社会では、誰もがこのような病気になる可能性があるのですから、「お互い様」と考えて、しっかり元気になった方が、自分にとっても、周囲にとっても、実りある将来に繋がっていきます。

職場に休職を相談する際は、医師の診断書を準備してからにするのがおススメです。

話を受け入れてもらいやすくなるからです。

まずは、信頼できるお医者さんを探して診断書を書いてもらい「お医者さんに休職を勧められている」と勤め先に相談してみることから、始めてみてくださいね。

パニック障害 克服へのステップ3 パニック障害との共存

対処法のアイテムが増えて、自分で発作や体調不良をコントロールできる自信が持てるようになると、完治したわけではなくても、パニック障害である自分を受け入れやすくなっていきます。

自律神経系のバランスを整えるのに、「今を否定しない」「自分を否定しない」ということはとても大事です。

何故なら、自律神経系とは、自分を守るためのプログラムでもあり、「否定」があると闘うモードにスイッチが入ってしまうからです。

発作に対処することができるようになり、パニック障害が完全に克服できていなくても、体調のいいときが増え始めると、パニック障害になる前と同じようなペースで色々な活動をしたくなることがあると思います。

けれど、良くなったように見えても、体調には波があり、いいときも悪いときもあって普通です。

良くなってきたかのように感じていたのに悪い日がくると、すごく落ち込んでしまうものですが、それも完治への過程の1つだと知り、ここは自分を慰めながら、不安を静めていきたいところです。

(この時期を乗り越えるためにも、セラピーやカウンセリングなど、心をケアしてくれる専門家と共に克服を目指されると、気持ちが楽になります。)

パニック障害 克服へのステップ4 不安な外出の克服

安定した生活の中で、発作が出なくなるようになり、体調不良が減っていくことが最初は大切なのですが、そのように体調が整ってきたら、それまで、治療のために避けていた外出などに挑戦するステップがやってきます。

人と会う、交通機関に乗る、一日の活動量を上げる、など、負担がかかるイベントを少しずつ体験し、体がそういった場面でも「自分は大丈夫」という自信をつけていくためのステップがくるんですね。

そして、自分にどんどん自信がついて、不安過敏になっていた神経が落ち着き、安心を感じる神経系がどんどん活性化してくると克服の日が近づいてきます。(※すぐにとはいきませんが、徐々に乗り越えられることが増えていく感じです。)

こうしてパニック障害や体調不良、不安について考える頻度が減っていき、日常のことについて、考える時間が増えていくんですね。

(このとき、これまでは体調のことばかりが悩みだったのに、他の悩みに気をとられるようになると思います。

他のことに悩めるようになることも、克服へ向かっている1つのサインです。

しかし、より幸せな人生を目指す上では「現実を思い通りにコントロールしたい」という気持ちを手放すことも、とても大切になってきます。)

元気になってくると思考も増えてきます。

ソフロロジーのアプローチ

私の専門セラピー「ソフロロジー」では、上述でお伝えした神経の仕組みを利用し、安心の神経系を強化していきます。

先ほど説明したように、体内では、情報がバトンリレーのようにして、1つの神経細胞から次の神経細胞へと伝わっていき、よく使われる神経系では情報が伝わりやすくなる一方、あまり使われない神経同士では情報が伝わりにくくなる、という性質があります。

しかし、実際には、もう一つ神経系のルールがあるんです。

それが、脳の状態が、快い、安心な状態にあるとき不安や動悸、過呼吸を促すような神経伝達が抑圧され、心や心が安らぐ神経系の情報伝達が強化される、というルールです。

ソフロロジーでは、安心の情報伝達が強化される状態に脳の状態をもっていってから、安心イメージを想像することで、安心の神経系にシナプス増強が起こるように導いていきます。

パニック障害を克服するステップを頭で理解しても、やはり神経系に働きかけていくワークを実践しなければ、神経系は変化していかないんですよね。

そんなセラピーワークのセルフ実践講座サイトを開設しました。興味がありましたら、覗いてみてくださいね。

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ラベンダー

パニック障害を克服し「夢」と「希望」が取り戻せた

おまけ

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