大人になった今の人生を生きづらくする記憶。
それらは、子どもの頃の意識と繋がり、対話することで、子ども時代の心の傷を癒して克服することができます。
そんなインナーチャイルド克服法をお伝えします。
インナーチャイルドはどのようにして生まれるのか?
毒親育ちの大人たちの生活に困った影を落とす存在として厄介者扱いされがちなインナーチャイルド。
そもそもインナーチャイルドとは、どういう存在なのでしょうか?
インナーチャイルドは「子ども時代に抑圧された感情」などといわれることがあります。
何か「強い感情」や「大切で分かってもらいたい感情」が芽生えたのに、その感情を表現できなかった、或いは感情を受け入れてもらえなかった場合にインナーチャイルドとして感情が残ることが多いんですね。
そして、そのきっかけは必ずしも暴力的な出来事とは限らず、起こった出来事について、子どもの捉え方と親が意図したことにギャップがあった場合が多いです。
例えば、こんなケースがあります。
車の中で子どもが騒いでいました。
親が何度も静かにするように注意しましたが、子どもがずっと騒ぎ続けるので、とうとう親は車を止めて子どもを外に連れ出し、子どもに言い諭しました。
「静かにしないと置いていっちゃうわよ」
もちろん、親は子どもを置き去りにするつもりなんてありません。ただ、静かにしてもらいたかったのです。
でも、子どもは言葉通りに親の言葉の意味を理解します。
“親のいうことを聞かないと、自分は見捨てられる”
これは子どもにとっては死を意味するほどの恐怖となります。
私のクライアントさんの中にも(男性)、このような体験をしたおかげで(「母親の言うことを聞かないと見捨てられる」と思った体験があったため)大人になってから、女性の言うことを何でも聞き入れなければいけないという潜在意識のブロックに悩んでいる方がいらっしゃいました。
このような出来事は、覚えていないことも多いんです。
その方も、このようなことがあった出来事すら忘れていましたが、あるとき、親戚がそういうエピソードを教えてくれ、自分の潜在意識にあったブロックの原因に気づいた、というわけです。
このようなケースでは、“親のいうことを聞かないと、自分は見捨てられる”と思った当時の意識が大人になった後も、潜在意識に残っていて「女性の言うことを何でも聞いてしまう」という行動や「女性が怖い」などの感情に繋がります。
もし、こうしたときの子どもが「本当に僕を置いていくの?お母さんは僕がいなくなってもいいの?僕はお母さんにとって大切な存在じゃないの?」と、子どもが聞けていたら、親は「置いていくわけないじゃないの」と答えたはずです。
でも、実際には、子どもはショックのあまり、冷静に自分の気持ちを伝えることなどできなくなります。
親もまた、まさか子どもがそんな風に受け取ったなどとは思わないので、対話する機会がないまま時が過ぎ、インナーチャイルドとして潜在意識の片隅に残ることになったのですね。
こんな風に気づかないうちに心の片隅で縮こまってしまうインナーチャイルドを、大人になってから克服することは本当にできるのでしょうか?
過去のインナーチャイルドを、いま克服できるのか?
「子どもの頃の意識に繋がることができる」「子どもの頃の感情であるインナーチャイルドが大人の心の中に残っている」
こうしたことは、にわかには信じがたい話かもしれません。
しかし、そもそも脳の中には時間がないのです。
潜在意識にしまわれている感情には、過去・現在・未来の区別がありません。
脳には、過去のことはどの場所で処理され、現在や未来のことは別の場所で処理される、というような仕組みになっていないんですね。
時間ではなく、処理される情報の種類によって場所が決まっています。
この図のように、映像は視覚野で、音は聴覚野で、匂いは嗅覚野で処理されるんです。

体感を伴って強い感情を抱いたとき、それが強い印象として脳に残るのですが、それが記憶として蘇ったのか、現実の出来事として体験したのか、は潜在意識には分からないんです。
それでは、そんな強い感情はどのようにして昇華されるのでしょうか?
感情の克服
例えば、次のようなケースをイメージしてみてください。
私には夫がいて、たまに夫と喧嘩をします(笑)。
私は寝れば忘れる、というタイプの人間ではないので、喧嘩をした日にしっかり夫と話し合えなければ、次の日にも感情を引きずってしまう面倒くさいタイプです (*_*; 。
こうしたことがあると、喧嘩した日の翌朝、さわやかに「おはよう」と夫に言えなくなります(汗)。
でも、ずっとムスっとしているわけではないのです。娘にはニコニコできるし、仕事中は、そんな感情なんて忘れています。
それでも、その後、夫が目の前にくると、喧嘩のことを思い出して、そのときの感情が戻ってきてしまうんですね。
つまり、喧嘩のときに生まれた感情が、3日後も私の中にある、という状態になるのです。
ちゃんと夫と話し合いができると、その感情は消えてなくなり、元通り、夫に接することができるようになります(笑)。
この例では、感情を昇華するのに3日を費やしたことになります。3日引きずった感情がこのようにして昇華されていくのは、あなたも何となくりかいできるのではないでしょうか?
実は、何十年前に生まれたインナーチャイルドが克服されるプロセスも、基本的にはこれと同じプロセスなんですね。
3日前の喧嘩について、夫と私が話し合い、感情が昇華されたのと同じように、何十年も前の感情であるインナーチャイルドに対しても「何が満たされなかったのか」言い分を聞いてあげたり、「どうして、そういう不本意な体験や認知が起こってしまったのか」説明をしてあげたりすることで、時を超えて、感情を克服することができるようになるんです♪
インナーチャイルドの克服法
3日前の喧嘩とインナーチャイルドとの違いは、何十年も前の感情は、様々なことが思い出しにくくなっている点です。
なおかつ、抑圧しなければいけないほど辛かった気持ちを掘り起こすことを無意識に怖れてしまうこともあるので、普段の意識の状態では、インナーチャイルドと繋がることができない可能性があります。
なので、インナーチャイルドを克服するための自己対話は、リラックスした状態で、誰の邪魔も入らないようなシチュエーションを整えてから行うのが鉄則です。
次のような方法でリラクゼーションした後に行うと、さらにやりやすくなります。
- 私のユーチューブチャンネルのリラクゼーション瞑想でリラックス
- お好きなリラクゼーション・ミュージックや瞑想音声でリラックス
- 5秒間呼吸を行う(5秒、鼻から息を吸って、5秒、口から息を吐く)
では、リラクゼーションした後に行うインナーチャイルド克服のための対話法を夫の体験談を例にしながら、お伝えしていきますね☆
(私がソフロロジストになる前に、夫はソフロロジストの元でインナーチャイルドとの対話セッションを受けているんです。)
【体験談】インナーチャイルドを克服する具体的なステップ
夫は以前、魚介類に対して極度の嫌悪感がありました。
見るのもダメですが、特に味と匂いに過敏で、私たち日本人が気づかないくらいの僅かな匂いや、隠し味として微量に混じっている魚の出汁も徹底的にダメだったのです。
そのため、お店の鮮魚コーナーには近寄れないし、冷蔵庫に魚が入っていればアルミニウムでぐるぐる巻きにされるし、私が魚料理をすればキッチンのドアを締めきり、料理が終わった途端、家じゅうの窓を開けて換気するなどという有様で、私はそういった彼の行動が苦痛で家では魚を食べられなくなりました(泣)。
そこまで彼が魚を嫌がるようになった理由は、子どもの頃に、母親に肝油を嫌々飲まされ続けたことが原因だと言います。
「魚介類の味や匂いを嗅ぐと肝油としか思えない」とよく言っていました。
【体験談で解説】インナーチャイルドを克服する4つのステップ
ステップ1
現在の自分をイメージします。
- 顔、背の高さ、着ている服の色、
- 表情、声、体を触った時の肌の感じ
ステップ2
抑圧した感情が芽生えた当時の状況をイメージします。
- 周りの状況、周りにいる人、子どもの頃の自分の姿
- 子どもの頃の自分の顔や表情、髪型、着ている服の色、している動作。
- 周りの物音、周りの人の話し声、子どもの頃の自分の声。
- 当時のその場の匂い、風など
- 触れているものがあったら、その手触り、肌触り
- 口に入れるものがあったら、その味や喉ごし
それらのイメージから思い出される当時の感情、嫌悪感、ショックなどを思い出します。
例:
夫は初めて肝油を飲まされたときのシチュエーションを具体的に頭に思い描き、その記憶に浸り、その時に感じた嫌悪感を思い出しました。
ステップ3
1. 現在の自分が、当時の子ども時代の自分を見ているイメージをします。
2. 子ども時代の自分に話しかけます。
「自分が大人になった自分であること、話がしたくて来たことを告げます」
3. そして、2人が安心して話せる空間へ一緒に移動します。(想像の空間でもオッケー)
4. 子ども時代の自分に問いかけます。
- どんな気持ちだったか?
- どんなことを言いたかったけれど、言えなかったか?
- どうしてほしかったのか?
5. 子どもの気持ちを聞いてあげたら、今度は大人の自分が伝えたいことを伝えます。
- 子どもの頃の自分を勇気づける言葉がけ
- 安心させてあげる言葉がけ
- その感情によって支障をきたしていることについて、これからどうしていきたい
と思っているか?
もう、その感情を手放していいことを、自分にしっくりくる言葉で伝えます。
例:
「あの時、きみは何を感じていたの?どうしたかったの?母親や周囲の大人にどうしてもらいたかったの?」
夫は、子どもの頃の自分が「求めていたこと」「本当の望み」を聞いてあげました。
当時の夫は誰かに「もう肝油は飲まなくていい」と言ってほしかったので、夫は記憶の中の自分に「飲みたくない肝油はもう飲まなくていいんだよ」と話しかけてあげました。
それから説明もしました。
「魚介類と肝油は全く別の食べ物で、魚介類はみんな味も匂いも違う。肝油とは全く別物なんだよ。
これからは、魚や海鮮が持っている味や匂いを味わってもいいんだ。肝油とみんな同じではないんだよ。
これからは魚や海鮮が持っている味や匂いを味わうようにしよう。そして、その味や匂いが嫌いなら食べなくてもいい。
好きだったら食べればいいよ。
これからは、誰かに食べることを無理強いされることはない。
自分で食べるか食べないかを決めることができるんだよ。だから安心して」
ステップ4
当時の記憶から、徐々に記憶を現在へ進めながら、もし当時の自分の希望が叶い、満たされた自分で成長していっていたら、これまでの困っていた状況を自分がどう生きてきたかをイメージします。
例:
夫は当時の記憶から徐々に記憶を現在へ進め、肝油を飲まされそうになったいた記憶には「ぼくは食べない」と断り、魚介類の味や匂いを嗅いだ記憶に対しては、その味や匂いを先入観なく味わって「食べるか食べないかを自分で決める」というイメージをしながら現在の自分へ戻ってきました。
インナーチャイルドは克服されたのか?
このセラピーを受けて帰ってきたときの夫は「感覚的には特に何も変わってないように感じる」と言っていました。
けれど、その翌日にお店の鮮魚コーナーを普通に通り過ぎることができたのです。
それまでは絶対に避けて通らなければならない場所でした。
それにも関わらず、魚独特の匂いも「大丈夫。肝油の匂いだとは思わない」と言ったのです。
当時の私たちにとっては大きな驚きでした。(セラピストになった今となっては、当たり前の話なのですが(笑))
そして、その後は魚の味がすべて肝油のように感じるのではなく、魚そのものの味が味わえるようになりました。
こうして夫のインナーチャイルドはきちんと克服できました!
もちろんすべての魚を好きになったわけではありません。
ヨーロッパ人は日本人のように魚を食べ慣れていないので、食べられない魚もあります。
けれど、圧倒的に食べられる種類が増え、何といっても、私が家で魚料理しても文句を言われなくなったので、私は魚に関する彼からのプレッシャーから解放されることができました (*^▽^*)。
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