セラピーを受けるって、どういうことなの?
セラピーを受ければ、100%「人生の焦燥感」や「心のしんどさ」などのネガティブな感情から解放されるのか?
それとも、セラピーなんて、心の弱い人が受けるもので、本当は誰かに頼らなくても一人で何でも克服できてしまうものなのか?
両方とも違います。
あなたが「人生の焦燥感」や「心のしんどさ」を感じているとしたら、それは、あなたの体内で、そういったことを感じる「体の反応」が起こっていることが原因です。
つまり、その「体の反応」がなくなれば、人生のネガティブ体験はなくなるんです。
では、どうすれば、その「体の反応」がなくなるのか?
それを効率的に安全に行う方法が「セラピー」なんですね。
「あんな不幸や、こんな不運」が起こったときに、体にどんな反応が起こるのか?心と体が乱れる「体の仕組み」と、それを静める「呼吸アプローチ」についてお話します。
人生の「焦燥感」ネガティブ感情が生まれる体の仕組み
この世界には、様々な「不幸・不運な出来事」が起こりますが、そのことによって、何故、焦ったり、ネガティブな感情を意だいたりすることになるのでしょうか?
それには「あなたの自律神経系が、どう反応するか?」という問題が関わっています。
そもそも、自律神経系とは、何なのでしょうか?
実は、自律神経系というのは、あなたの命を守るためのシステムです。
そして、動物も、このシステムを持っているんです。
野生で暮らす動物たちは、天敵から自分の身を守り、生き延びなければいけませんよね?
じゃあ、「どうやって生き延びるの?」ということを、自動でやってくれる「防御機能」が生物には備わっているんです。
そうなんです! 生き延びるための防御反応は、自動、オートマティックだったんです!

生きるために必要な「呼吸」や「傷の修復」、「食べた物の消化」が自動、オートマティックなのと同じなんですね。
さてさて、人間は、そんな野生の「脊椎動物(せきついどうぶつ)」たちから進化した存在です。
下図のような流れで、人間が生まれたわけなんです。
進化の流れ

現代生活の中では、人間に天敵はいないかもしれません。
だけれども、野生動物から進化を遂げ、その遺産を体内に持っている私たちは、天敵から自分の身を守る神経反応を維持しています。
そのオートマティックな防御反応は3つあり、それぞれのパターンは、異なる神経系によってコントロールされています。
- 防御パターン1 - 副交感神経系
- 防御パターン2 - 交感神経系
- 防御パターン3 - 社会神経系
実は、これら3つの神経系は、進化的に起源が異なるんです。

1994年にPorges(ポージェス)によって発表された「ポリヴェーガル理論」では、次のように説明されています。
人生の「焦燥感」ネガティブ感情の種類
先ほど、自律神経系というのは、元々、命を守るためのシステムだと説明しました。
はい、この「身を守るためのオートマティックなシステム」の一つが、「ネガティブな感情」なんです。
何故かというと、「感情」を感じることによって、私たちは行動へと駆り立てられるからです。
身に危険が迫ったら、間髪いれず行動を起こして危険から身を守らなければいけません。その「行動」へ駆り立ててくれるのが「感情」なんですね。
でも、「感情」といっても、色々と種類がありますよね?
どんな感情を感じるのか?
それは、「どの神経系が活性化したか?」、つまり「どの防御戦略で身を守るか?」によって変わります。
それぞれの神経が活性化した場合の、防御戦略の違いは、下図の通り。

とはいえ、天敵のいない人間が「身の危険を感じる瞬間」って、どんなときなのでしょうか?
実は、天敵がいない人間は、「客観的な身の危険」ではなく、「自分にとって都合が悪いと感じること」があると、防御システムが自動的に作動する仕組みになっています。
それこそ、「あんな不幸やこんな不運」が身に降りかかってきたときにシステムが作動するんですね。
人生にネガティブ体験が起こったとき、あなたにも私にも共通する「反応パターン」があります。
そして、その反応パターンは「ネガティブの強さのレベル」によって、次のように変わっていきます。
ネガティブ・レベル弱 - 「社会神経系」の防御戦略
「参ったな~。厄介なことになった」と、心の余裕がある状態で「問題発生したわ~」と感じているときは、「社会神経系」が活発化します。
この防御戦略は、サルたち(霊長類)に発達している戦略で、「一人で自分を守る」ではなく、「群れの力を借りて、集団で自分を守る」という戦略です。
なので、人間の場合、問題解決のために「誰かと繋がり」を持とうとします。
信頼できる誰かに相談したり、トラブル原因となった相手に「交渉」したりして、温和に解決しようと試みるんですね。
(仲間と協調する行動を促す神経系)
ネガティブ・レベル中 - 「交感神経系」の防御戦略
カチンと頭に来たり、理解し合おうと思って話し合いを持ちかけたのに「相手が自分の言い分をまるで聞き入れてくれない」と感じたり、悲しく思ったりすると、「交感神経系」が活性化します。
この防御戦略は、ライオンやシマウマなどの哺乳類に発達している戦略で、「逃げる/闘う」どちらかで対処します。
中自分が生き延びる見込みが高い場合、「逃げる」が選択されます。ライオンに狙われていても、ライオンが遠くにいる場合は逃げるわけです。
ところが、ライオンに飛び掛かられるほど近距離になると、シマウマは後ろ脚で蹴り上げるなどの、攻撃へ転じます。
ネガティブレベルが強くなるにつれて、攻撃シップが高くなるわけです。
人間の場合、うまくいかないことに対して「不安」や「恐怖」を感じ、逃げたくなります。人間関係で交渉決裂となったときにも「相手や、将来のトラブルに対する不安や怖れ」が湧いてきますよね?
けれども、もっと切羽詰まってくると「怒り」や「腹立たしさ」が湧いてきて、「世の中に対する批判」だとか、人間関係では「相手は間違っている、と責め立てたくなる気持ち」が湧いてきます。
冷静さは失われている状態です。
ネガティブレベル 最強 - 「副交感神経系」の防御戦略
「ヤバい状況に対して自分は無力だ」と感じていると、「副交感神経系」が活性化します。
この防御戦略は、トカゲなどの爬虫類に発達している戦略で、「フリーズ、不動、仮死状態」という戦略です。
トカゲやイモリは、至近距離で近づこうとすると、ピタッと止まって動かなくなりますよね?
人間の場合も、圧倒的な脅威に対しては「足がすくんで動けない」という反応が起こります。
人間関係では、圧倒的に強い相手からの圧力や暴力に対して(逃げ場のない家庭での「親からの暴力」や会社の「上司からの圧迫」など)、「鬱」や「無気力」に追い込まれる場合があります。
この状況では、感情も感じなくなります。すべてが封印されるのです。
けれども、ネガティブな感情を感じない代わりに、体の不調として表れることがあります。
人間の防御戦略 まとめ
このように、ネガティブの度合いが強まれば強まるほど、協調的な反応から、攻撃的な反応、無気力な反応、というように防御システムが自動で切り替わっていきます。
そして、どの場合も、危機に立ち向かうための「緊張のエネルギー」が生産されます。
野生の世界では、このエネルギーは、敵と闘ったり、逃げたりして発散されることで体内から消えていくのですが、人間の日常生活の中では、生産された「エネルギー」が発散されないまま蓄積されることが頻繁にあります。
すると、小さなことで不安になったり、イライラしたり、攻撃的な口調になったりすることをコントロールできなくなるのです。
ですから、この溜まったエネルギーを解放していくことが、まずは先決。
では、エネルギーの解放とは、どのようにして行えばいいのでしょうか?
それを理解するために、「豹(ひょう)に捕らえられ、食べられる寸前というトラウマ体験をしたインパラが、いかにしてエネルギーを解放し、日常へ戻るのか」を見てみましょう。
緊張のエネルギー解放プロセス
インパラのような哺乳類には、哺乳類の防御戦略「逃げる/闘う」と、トカゲの防御戦略「フリーズ、不動、仮死状態」のプログラムが搭載されています。
天敵に狙われると、体内に莫大なエネルギーが生産され、逃げたり闘ったりします。(これこそ、火事場の馬鹿力です。)ここでエネルギーを出し惜しみして、死んでしまっては元も子もありませんからね。
でも、それでも逃げきれずに天敵につかまってしまったら、今度は仮死状態のような「凍り付き反応(トカゲの戦略)」をするのです。
ただし、凍り付き反応をしているとき、全力疾走をするエネルギーに満ちている状態から活動状態が落ちるので、見かけはぐったり脱力しているようですが、実は体内には高い緊張のエネルギーが封じ込められたままになっています。
呼吸はほとんどしておらず、心拍も低下している状態です。
ところが、このような状態から、運よく命拾いすることがあるんですね。
Youtubeに、いい動画ありましたので、ご覧ください。
この動画では、豹(ひょう)に首根っこを咥えられて、「生き延びられる可能性がゼロ」という状態のインパラが「不動」に陥っています。
そして、そこへハイエナがやってきて、豹はインパラを咥えて移動しようとするのですが「インパラが大き過ぎて持っていけない」と判断するや、インパラを手放して逃げて去って行ってしまいます。(動画 49秒付近)
ハイエナは群れで行動する動物なので、群れで襲われたら、豹一匹では太刀打ちできないからです。
豹が逃げ去った後、ハイエナも遠ざかっていき、結果的にインパラは九死に一生を得ます。
例え、敵に捕まっても、不動でいれば、新たな天敵に気づかれないというメリットもありますし、新たな敵に「コイツ死んでるっぽいから、他のフレッシュな獲物を探そう」と、興味を失わせることもできます。
自然界では、死肉は腐っている可能性があるので、安全な食べ物とはいえないからです。
こうして、九死に一生を得る確率が上がるのですね。
このように、一旦、交感神経が極みまで活性化し、体の中に高い緊張のエネルギーが封じ込められた状態で「仮死状態」に陥ると、その後、意識が戻った後も、体内には「目に見えない膨大な緊張のエネルギー」が充満した状態になります。
ここから、トラウマの後遺症を残さず日常へ戻るために、野生動物たちは安全な環境に戻ったあと、大きな呼吸の回復が起こり(動画 1分11秒付近)、次に体が震えて、体に閉じ込められていた高い緊張のエネルギーが一気に解放されます。
そして、インパラは何事もなかったかのように走り去っていきます。
人生の「焦燥感」ネガティブ感情の黒幕
さて、冒頭で「体の反応」があるから「人生の焦燥感」や「心のしんどさ」を感じることになる、とお話しました。
その「体の反応」こそ、「緊張のエネルギー生産」という反応です。
「人生の焦燥感」や「心のしんどさ」、「ネガティブな感情」の真の黒幕は、体が、あなたを守ろうとして生産される「緊張のエネルギー」だったんです。
冒頭で投げかけた1つ目の疑問、「セラピーを受ければ、100%「人生の焦燥感」や「心のしんどさ」などのネガティブな感情から解放されるのか?」。
これは、セラピーの中で「緊張のエネルギーの解放」を適切に行ってくれる場合であれば、必ず、心や体に変化が表れます。
ただし、「緊張のエネルギーの解放」は、決して号泣などの激しい反応ではなく、「頬の紅潮」や「深い呼吸の回復」、「静かな涙」など、落ち着いた穏やかな反応なのです。
そのサインを正しく見分けられるセラピストとなら、きっと「緊張のエネルギー解放」がうまく行えるでしょう。
2つ目の疑問、「セラピーなんて、心の弱い人が受けるもので、本当は誰かに頼らなくても一人で克服できてしまうものなのか?」
これについては、適切なセラピー手法を知らない方が「一人でエネルギーを解放させる」ことは無理です。
つまり、「人生の焦燥感」や「心のしんどさ」から解放されるために必要なのは、何でもいいから瞑想やマインドフルネスをしたり、自己受容を心がけたり、心理学を学んだりすることではなく、「緊張のエネルギー」を解放させるステップを適切に実践できるようになることなんですね。
それでは「緊張のエネルギー解放」は、どのようにして行えばいいのでしょうか?
「緊張のエネルギー解放」に必須なのが、インパラの動画にもあったように「呼吸の回復」です。
あなたは、今、自分がどんな呼吸をしているか、気づいていますか?
心が安定している人は、呼吸がゆったりと安定しています。
でも、いきなり、そうした呼吸を実践しようとしても、うまくいきません。
そこで、まず、試して頂きたいのが「呼吸・筋弛緩法」です。
呼吸筋弛緩法(こきゅう きんしかんほう)
- 口から息を吐く
- 鼻から息を吸う
- 息を止めて、体に力を入れる(体に緊張のエネルギーをつくる)
- 口から息を吐きながら、体をゆるめる(緊張のエネルギーの解放)
体は、「ゆるめよう」と思っても、ゆるんでくれるものではありません。
しかし、一旦、緊張させた後に、意識的にゆるませると、「自力ではゆるめることができなかった緊張までゆるむ」という性質があるんです。
実演動画を公開していますので、ぜひ参考にしてみてください。
また、この「呼吸・筋弛緩」を行った後に、さらに呼吸をゆるめ、神経系をゆるませる瞑想ワークを無料で公開しています。
ネガティブな感覚を吐き出したい方は、コチラをお試しください。
安らぎや癒しを感じたい方は、こちらをお試しください。
寝る前に、仕事の小休憩に、仕事終わりに、習慣的に実践していくことで、溜まったエネルギーが少しずつ解放され、心や体が軽くなっていきます。
そうすると、体の自然治癒力も高まり、心と体のパフォーマンスが向上していきますよ♪。
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