2021年の夏は、デルタ株の出現と、夏季休暇が重なり、どこの国も、コロナ対策に冷や冷やした夏でしたね。

そんな中、ヨーロッパでは、イギリスを皮切りに、フランスも、ワクチン接種率が上がり、生活の規制緩和が実施され、人々のコロナ不安のプレッシャーは下がりつつあります。

日本の方から「フランスのコロナの状況」について、聞かれることも多かったので、本記事では、フランスのコロナの最新状況について、お伝えしたいと思います。

フランスの夏休みコロナ感染状況

2021年の夏休みは、過去のコロナ波よりも、ピークが下がりましたが、バカンス地では、局所的に医療崩壊寸までいったところもありました。

フランスでは、デルタ株の出現と夏のバカンス時期が重なり、コロナ感染拡大が危惧されましたが、結果的には、夏のコロナ波は、去年の秋(最大ピーク時の新規感染者数8,6852人)や、今年の冬(同 4,3505人)に比べて、抑えることができた(同 2,6460人)ようなんですね。

(※フランスの18歳以上の人口と、日本の18歳以上の人口を調べていないので、日本の感染者数とフランスの感染者数をパーセンテージで比較できずに申し訳ありません。)

フランス全土を平均した感染率は抑えられたのですが、夏の間、南仏のバカンスで人が集まる地域では、局所的に感染率が高く、医療崩壊寸前までいったり、患者さんが施設搬送されたりする地域もありました。

これから、バカンスが明け、皆さんがパリに戻って来て9/2から新学期が始まりますので、今後、パリで感染率が上がるだろうと予想されています。

フランス市民のコロナ不安

それでも、市民の間でのコロナ不安は、一時期に比べるとかなり下がっている印象です。

長距離を移動のための「電車」や「50人以上の人が入れる大型施設」などでは、「健康パスポート」がないと入場が許可されていなかったり、外出時のマスク着用義務がなくなるなど(お店に入るときは着用義務有)、生活の中で「どこでコロナにかかるか分からない」という不安が緩和されたことも大きいのではないかと感じます。

(※ちなみに、フランス人は、マスクが嫌いで、マスクの文句をよく聞きます。)

「健康パスポート」というのは、次の2つのどちらかが該当する人に渡される証明書です。

健康パスポートを手に入れる条件

 

  • ワクチンを打っている
  • 72時間以内に受けた検査でコロナ陰性が確認されている

フランス市民のワクチン接種率

そんなフランスの気になるワクチン接種率は、フランス政府の公式サイトによると、18歳以上の人口で、次のようになっています。

18歳以上(フランスでは18歳から成年)のワクチン接種率

 

85%が1回目を接種。
77%が現在必要と言われている回数を接種。

65歳以上のワクチン接種率

 

90%が1回目を接種。
87%が現在必要と言われている回数を接種。

フランスには、フランス領と呼ばれる飛び地もあるため、ヨーロッパ本土に限ると高齢者の接種率は、もう少し上がるんじゃないかな?と個人的には推測しています。

フランスで打てるワクチンの種類

フランスで接種することのできるワクチンは、次のようなものがあり、副反応は日本人に比べると、だいぶ軽症で済んでいる印象があります。

 
年齢ワクチンの種類
12歳以上ファイザー、モデルナ
18歳以上ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ、ジョンソン・ジョンソン

日本人には、かなり重い副反応などが頻繁に出ているようですが、フランスでは副反応は軽い方がほとんどな印象です。

ワクチンを接種した人は、アセトアミノフェンを含んだ解熱剤を飲むように処方されますが、「何日も寝込んだ」という話は、私の知人の間では聞いたことはありません。

これは体格の差ではないかと、個人的には思っています。

ヨーロッパ人は、日本人よりも体格が大きいんですよね。

フランスの公的なワクチン・サイトでは次のような副反応が公表されています。

フランス ワクチンの副反応

一般的に、ワクチン接種でよくある副反応

  • 注射を受けた部位の「痛み」「皮膚の反応」「腫れ」
  • 頭痛
  • 疲労、熱、悪寒
  • 筋肉痛や関節痛
  • 消化器官の不調
  • 神経節の腫れ
  • アレルギー反応や蕁麻疹

また、100 000 回に一回の確率で出てくるような稀で重度の副反応としては、次のような症状が公表されています。

  • ファイザー:動脈の高血圧、 稀に心筋炎や心膜炎。
  • モデルナ: 動脈の高血圧、 稀に心筋炎や心膜炎。
  • アストラゼネカ: 血栓、出血時、血液凝固の低下、稀に血液成分が細い血管から漏れだす症状、極まれにギランバレー症候群。
  • ジョンソン・ジョンソン:血栓、出血時、血液凝固の低下、極まれにギランバレー症候群、血液成分が細い血管から漏れだす症状、耳鳴りやめまい。

※フランスでは観察されていない副反応も含む。

フランスのワクチン反対派の状況

それでも、ワクチン反対派の方はいます。

自然派医療を好む方はもちろんですが、スピリチュアル的な方もそうですし、外国製のワクチンに不信感を持っている方も一定数いらっしゃいます。

また、「ワクチンを打っても、コロナにかかる場合がある(重症化率は下がる)」ことから、ワクチン接種に意味を感じない方や、ワクチンの開発期間が短すぎること、データが出そろっていないことからワクチン接種をあと伸ばしにしたい方もいらっしゃいます。

フランスのサノフィ社が従来型の蛋白ワクチンを流通させる見込みがあり、このフランス産ワクチンを待ってワクチン接種をしたいと考えている人もいます。その状況を受けて、バカンスが始まるに、サノフィの社長が「サノフィ社のワクチンを待たずにワクチンを接種するように」というメッセージが発表されたこともあります。

フランスの「健康パスポート」導入の影響

フランスでは、バカンス明けの9月から「健康パスポート」の強制力が、かなり厳しくなります。

健康パスポートが義務付けられている職種は飲食店や文化施設、交通機関などの接客業を中心に、かなり多く、それらの職種で健康パスポートを持たない場合は、給与が支払われなかったり、そういったことが理由で職を失っても失業保険は支払われない、などの措置がとられます。

9月1日の時点で、健康パスポートが義務付けられている職種は以下のとおりです。

健康パスポートがないと働けない場所(ボランティアによる参加なども含みます)

  • 映画館
  • 図書館
  • ディスコやバー、クラブ
  • カジノやビリヤードなどの娯楽施設
  • 美術館
  • テーマパークや動物園
  • プールやスポーツジム
  • 劇場やコンサート会場
  • お祭り会場やフェスタ
  • スポーツイベント
  • ホテルやクルージング、休暇を過ごす施設
  • 喫茶店やレストラン
  • 見本市
  • 老人ホームや介護施設
  • 飛行機やTGV、夜行列車や長距離バス
  • 医療施設(救急を除く)

長距離移動の電車やバス、飛行機は、乗客であってもパスポートが必要です。(観光を予定されている方はご注意ください。)

「健康パスポート」の存在は、日常生活にも影響が出てきています。

私たちの生活でいくと、子どもたちの遊び場施設「プール」「動物園」などにはパスポートなしでは行けなくなりました

50人以上の人を収容できる施設はパスポートが必要ということで、大型スーパー、ショッピングモールにも買い物に行けなくなりました。

ヨーロッパの冬は天候も悪く、すぐに陽が落ちるので、子どもたちは室内遊びが中心になります。

そんな子どもたちのために、仕事のために、生活の利便性を確保するために、ワクチンを受ける方もいらっしゃいますが、この健康パスポートの強制力に対して、大量の抗議行動も計画されています。

(※フランスでは、抗議行動やストがあるのはいつものことですが・・・。)

WHOは、2021年の4月に「ワクチンを義務化することに対して反対」という声明を出していて、フランスは、当初「ワクチン・パスポート」の導入を検討していましたが、国会での審議の結果、これを「健康パスポート」に切り替えた経緯があります。

そのことによって、ワクチンを打っていなくても、72時間以内に検査を受けてコロナ陰性が確認できた人も「健康パスポートが貰える」ような制度ができました。

ただ、現在は、コロナの検査は完全無料で行われていますが、10月半ばからは有料になります。

何度もお金を払って、コロナ陰性を証明し、パスポートを受け取るよりも、ワクチン接種を選ぶ方は、今後も増えていくでしょう。

10月からは、パスポートが必要な年齢は12歳以上に引き下げられるそうです。(学校にはパスポートがなくても入れますよ。)

「健康パスポート」の導入と、「ワクチン接種率が上がる」ことが影響して、これまで営業制限がかけられていた職種の営業が自由になっていくことが見込まれます。

ただ、この「健康パスポート」制度は、コロナの波がおさまれば、11月15日に撤廃される予定があるそうです。

これまで、コロナ感染者数が上がる度に「外出規制措置」がとられ、特定の職種の営業が禁止されてきました。

今後は、これまで「外出規制措置」を取ってきたのと同じような状況になった場合に、この「健康パスポート」制度が実施されるのかもしれません

まとめ

「ワクチンの副反応」や、「ワクチン効果の限界」、「ワクチン反対派」などもありますが、フランス人にとっては「自由に人と会えること」「自由に生活できること」の重要度が高いこと、また、今後、「サノフィ社の従来型・蛋白ワクチン」を始め、新しいワクチンが流通する見込みもあるので、ワクチン接種率はゆるやかに上がっていくのではないかと思います。

また、フランスのワクチン接種率が上がったことは、この夏のコロナ波で、過去のようなひどい医療崩壊が起こらずに済んだことに貢献しているように見えます。

ヨーロッパは冬が暗く長いため、「人と会えないこと」「自由に行き来できないこと」による鬱が深刻化していました。

コロナの長期に渡る「生活の規制」が緩和され、「医療が守られる」ことで、この冬のフランス市民のQOLが去年の冬より上がるといいと思います。