過去に体験したイヤな感情や記憶がいつ蘇ってくるか分からない。
蘇ってきたら、胸が苦しくなる、動悸がする、感情がコントロールできなくなる。
そんな生活をしていると、平安な日常が不安に支配されてしまいますよね。そして、そういったことのせいで特定の状況が苦手だったり、特定の対人関係が難しくなったりします。
どうして、トラウマ体験をするとこうなってしまうのだと思いますか?
この記事では、トラウマの脳の状態をセルフケアする方法をお伝えします。
トラウマって脳で何が起こってるの?
トラウマと一口に言っても、様々な重症度があります。
また、一般にトラウマというとPTSD(心的外傷後ストレス障害)を伴うような重度の高いものを想像しがちですが、実は、そういった重度の高いものでなくとも、激しい感情が喚起され、ネガティブな印象を抱いた体験は脳が似たような反応をしています。
どんな反応なのでしょうか?
それは感情をつかさどる右脳が興奮状態になる一方、記憶を処理する左脳の活動が低下する、という反応です。右脳と左脳がアンバランスな活動状態になるということですね。
そして、このアンバランスな脳の活動状態がネガティブな体験の映像や音、匂い、感覚などの情報と強く結びついて体に記憶されます。
ネガティブな体験全体の情報がアンバランスな脳の活動状態と結びつくのではなく、ネガティブな体験の断片情報がアンバランスな脳の活動状態と結びつくというところがポイントです。何故なら、その体験以降は、断片情報だけでも、つまり、そのネガティブな体験に似た状況になっただけで(体験したときと似た人に会う、似たような場所に行く、同じような光や音の刺激を受ける)、連鎖的にアンバランスな脳の活動状態が引き起こされてしまうからです。アンバランスな脳の活動状態とは、すなわち、過度なストレス状態のことです。
このアンバランスな脳の活動状態に調和を取り戻すことができると、ショックな体験を普通の記憶と同じように扱えるようになっていきます。
では、どうすれば、アンバランスな脳の活動状態に調和をもたらせるのでしょうか?
そのためには、原因となっている記憶をおぼろげに思い浮かべながら、右脳と左脳に交互に刺激を加えるエクササイズが効果的なことが分かっています。こうすることで右脳が興奮状態している状態や、左脳の機能が低下している状態を和らげることができるからです。
では、早速ソフロロジー・メソッドを用いて脳機能のバランスを整える方法、ご自身で行えるやり方をご紹介しますね。
心と身体をほぐして調和をもたらすセラピー
ストレス体験は、体が記憶した体感というものが特に強い影響力を持っています。「こんなことがあった」「こんなことを言われた」という言葉にできる明確な記憶だけでなく、体全体で感じた緊張感というのが深層意識に深く刻み込まれているのです。
ソフロロジーでは、この体感を新しい体感で置き換えながら、筋肉の緊張と弛緩、右脳と左脳の刺激、イメージトレーニング、それらを総合的に用いてエクササイズを行います。
イメージトレーニングに慣れていない方は「こんな遊びみたいなことをして、本当に効果があるの?」と不安に思われるかもしれません。
けれど、実は、脳にイメージすることが現実に及ぼす影響は「理想の人生を実現するために必須の知識」と言っても過言ではないので、ご存知ない方は、ぜひ下記の記事をご覧になってみてくださいね。
トラウマ体験を「単なる過去の記憶」にするストーリー
例えば職場で嫌がらせを受けたために「職場というもの自体が怖くなった」「転職後もいつ同じようなことが起こるか分からないという想像に怯えている」という症状を例にとりましょう。
「それはもう過去のことだから気持ちを切り替えないと」と言われても、それができないのところがトラウマ体験の厄介なところです。
そこで、ストーリーを作り、そのストーリーをエクササイズを通して体験します。「ネガティブな体験は過去のもので、今の自分は安全である」ということを脳に理解させるストーリーをエクササイズで体験することによって、傷が癒えるまでに何年も要する体験を数カ月で過去のものにすることができるようになりますよ。
例えば、次のようなストーリーです。
- 拳に力を入れてその記憶を握り潰してください。
- そして、腕をぐるぐる回転させた後、拳の中に握りしめた記憶を遠くへ放り投げ(握った手も開きます)、肩も腕も手も脱力してください。肩や腕や手から力が抜けると同時に過去の自分も手放してしまいます。
- 次に、その場で軽くジャンプをして過去出来事で感じた緊張をすべて払い落とし、自分を過去から解放してあげます。
- 静かに呼吸をして新しい自分になった感覚を味わいいます。
自分の心がほぐれていくストーリーを想い描きながら、自分が実際に変化していくことを想像の中で体験するのです。
心に傷を残すトラウマ的体験が時間の流れと共に癒されるのを待つ場合、数カ月、場合によっては何年もの歳月を費やすことになります。場合によってはそれでも癒されないこともあるでしょう。セラピーが効果的であるのは、心がほぐれるまでの時間を大幅に短縮し、再び同じような状況に陥らないように心を守る予防壁も作れることにあります。
どうしてそのようなことが可能になるのでしょうか?
それは、上記に紹介した記事で説明しているように、人間の脳のメカニズムとして「想像で経験すること(バーチャル)と、現実で体験すること(リアル)を区別しない」という性質があるからです。ですから、セラピーの中でイメージトレーニングとして体験した自分の変化であっても、実際に体験した自分の変化の中で育んだ自信と同じものが得られます。(現実に体験した時と同じように神経系が育まれていきます。)
「ストーリー仕立てのトラウマ解消法」興味のある方は下記の実践方法もご覧ください。
「ストーリー仕立てのトラウマ解消法」実践方法
「ストーリー仕立てのトラウマ解消法」エクササイズⅠ <腕風車>
<基本の姿勢>
- 足を肩幅くらいに広げてしっかり立ちます。
- 背筋を伸ばし、背骨の上に頭が乗るようにして前を向きます。
- 体のバランスが崩れても立て直しやすいように、膝は突っ張らず、柔らかくしておきましょう。
- 両手・両腕の力は抜いて、脇に垂らし、両肩の力も抜きます。
- 体の感覚に集中するために目をつむります。
<利き手のエクササイズ1回目> エクササイズは利き手から行います。
まずは嫌悪感を抱いている記憶に関係した身体感覚をおぼろげに思い出します。「こんなことがあって、こんなことを言われて」という鮮明に言葉で説明できるような感覚ではなく、どこかがだるいとか重いとかモヤモヤする、そんな曖昧な感覚として思い出します。
- 鼻から大きく息を吸いながら利き手で拳につくり、その感覚をすべて手に集め、手の中でその感覚を握りつぶします。
- 息を止めて、その拳を後ろ回りにブンブンと大きく回します。腕や肩を傷めない程度に力いっぱい回してください。
- 何回か回したら、握った拳をパッと開きながら強く息を吐き出し、拳に握りつぶされたトラウマの記憶をはるか遠くへ放り投げます。
- 普段の呼吸に戻します。
<体感する時間>(約7~10秒)
- 利き手、利き腕、肩がほぐれた感覚に意識を向けてください。
<利き手のエクササイズ2回目>同じエクササイズをもう一度、行います。
- 鼻から大きく息を吸いながら、トラウマを体験していた時の自分の気持ちを拳の中に握りつぶします。
- 息を止めて、その拳を、今度は反対回しでブンブンと大きく回してください。腕や肩を傷めない程度に力いっぱい回します。そして握った拳をパッと開きながら強く息を吐き、拳に握りつぶされた不愉快だった気持ちをはるか彼方へ放り投げます。
- 普段の呼吸に戻してください。
<体感する時間>(約7~10秒)
- 手の中が空っぽになっていることを意識してください。
- 手や腕がほぐれて解放されているのを感じます。
<利き手のエクササイズ3回目>好きな方向へ腕を回してください。
<体感する時間>(約7~10秒)
- 体の感覚を全体的に丁寧に味わってください。
- エクササイズの前と後ではどう変わったでしょうか?
- <利き手と反対の手のエクササイズ>
利き手のエクササイズ1~3を行う。
<両手のエクササイズ>最後に両腕を用いて同じエクササイズを行います。
- 鼻から大きく息を吸いながら、体感として残っている不快感を両手の拳の中で強く握りつぶします。
- 息を止めて、その拳の感覚に意識を集中します。
- その両手を好きな方向にブンブンと大きく回してください。腕や肩を傷めない程度に力いっぱい回します。そして握った拳をパッと開きながら強く息を吐き、トラウマにまつわる全てをはるか彼方へ放り投げてしまいます。
- 普段の呼吸に戻してください。
<体感する時間>(約7~10秒)
-
- 体が脱力し、頭の中が穏やかになっている感覚を感じてください。
「ストーリー仕立てのトラウマ解消法」エクササイズ2 その場でジャンプ
<基本の姿勢>
-
- 足を肩幅くらいに広げてしっかり立ちます。
- 糸の切れたマリオネットのように上半身を脱力し、下半身はしっかりと体を支えるようにします。
- 体の感覚に集中するために目をつむります。
<エクササイズ>
- まだ体の中に残っているトラウマ体験の名残といえる身体感覚を自分の中から揺すって足元へ捨てましょう。
- トラウマ体験の名残の身体感覚を両足で踏みつけて粉々に砕いてしまいます。不愉快な出来事の記憶もすべて踏みつけて壊してしまいます。
- もう十分だと思われるまでジャンプしたら、ジャンプをやめて呼吸を整えます。
<体感する時間>(約7~10秒)ジャンプを止めて、体の感覚に意識を集中します。
-
- 上半身から力が抜けている感覚に意識を集中します。
- 体の中に残っていたわだかまりがスッキリしたのを感じましょう。
「ストーリー仕立てのトラウマ解消法」エクササイズ3 その場で足踏み
<基本の姿勢>
-
- 足を肩幅くらいに広げてしっかり立ちます。
- 背筋を伸ばし、背骨の上に頭が乗るようにして前を向きます。
- 体のバランスが崩れても立て直しやすいように、膝は突っ張らず、柔らかくしておきましょう。
- 両手・両腕の力は抜いて、脇に垂らしておきます。
- 体の感覚に集中するために目をつむります。
<エクササイズ>トラウマ体験を繰り返し思い出していた頃の自分から遠ざかり、新しい未来の自分へ向かって歩いていきます。
- 足踏みします。
- これから何年後、何十年後、たくさんの幸せがあなたの人生にやってきて、トラウマ体験を思い出しては苦しんでいた頃の自分を思い出すことがなくなっている未来の自分へ向かって歩いて行きます。
- 歩きながら変化していく自分、変化していく環境をイメージします。
<体感する時間>(約7~10秒)歩くのを止めて体の感覚に意識を集中します。
- たくさんの幸せに包まれているあなたは、もはや過去の苦しい思い出を思い出すことはありません。
- しばらく、ぼーっとしてみてください。
エクササイズはこれでおしまいです。
ゆっくりと目を開けて日常に戻りましょう。
おまけ EMDR
眼球運動を利用して右脳と左脳のバランスをとるEMDRという方法も近年では大変注目されています。嫌悪感を抱くことがら、トラウマとなっている記憶や感情を何となく頭に思い描き、その状態で目を左右へ動かすという簡単な運動です。
このEMDRをセルフで行う動画がユーチューブにありましたのでご紹介します。
眼球エクササイズを行う前に、困っていることについてのネガティブ具合を1~10で評価しておきます。
しばらく以下の動画を見たあと、同じことについてのネガティブ具合を1~10でもう一度測ってみましょう。
一回では数字は2、3低下するくらいでも、つづけると、だんだんと普通の記憶と同じような感覚でとらえられるようになっていきます。
注意点としては、顔を左右へ動かさないことです。眼球だけを動かして動画の緑の点を追ってください。
暗闇で行うのはやめましょう。